俺にとっては可憐な花

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奏の言葉に森岡の動きが止まる。 (怒らせたかもしれない……。でも、一発ぶん殴られて終わるなら、そっちの方がいい……) 3日と明けずに獣のように抱かれ、森岡の熱を注がれる。元々小さな奏には負担が大きかった。それに身体だけでなく、心まで腐りそうで、奏はそれが怖かった。 「やめる?本気で言ってんのか?拾ってやったのは誰だと思ってんだ?」 森岡の低い声。氷のように冷たい感情を殺した声音が奏の鼓膜を恐怖で揺さぶる。奏の手が震えた。 「……」 震えながら押し黙る奏を見て森岡はにっと笑いながら歩み寄り、俯く奏の小さな顎を掬って顔を上向かせる。 「だんまりか。なっさけねぇ。……まぁ抜けたいならそれ相応の覚悟はしてもらわねぇとなぁ」 (覚悟?リンチとか……そういうこと?) 頭からサーッと血の気が引くのがわかった。奏は怖いのだ。そして森岡は臆病で身体を開くしか自分を守る術を知らない奏のことをよくわかっていた。 臆病で弱い奏。それにどっぷりと嵌まり込んだのは森岡の方だ。今では奏が可愛くて仕方がない。そして、手放したくないから恐怖で縛る。 「よく考えて選べ。てめーの引退式は、マワされるかボコられるかの二択だ。それが嫌なら大人しく俺に抱かれとけ」 吐き捨てるようにそう言うと乱暴に顎を掴む手を離し、森岡は教室を出て行った。 張り詰めていた空気が一気に弛み、奏は息を吐いた。 (……俺はどこで間違ったんだろう) 奏の大きな目に涙が盛り上がりポタリと床に零れ落ちる。泣きながら破かれたシャツの上に学ランを着こみ外へ出た。辺りはもう暗くなっていて奏の落ちた心に影を差す。 奏はこのまま家に帰りたくなくて、いつもと違う道を歩き始めた。
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