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遠い町に行くことになったんだよ。
たかしくんはそう言ってにっこりと笑った。
「遠い町って、どのくらい遠いのかな?」
私は、彼を不安にさせないように心がけながら笑顔で返した。
たかしくんは私の隣のお家に住む、とても利発な子だ。公園のベンチに腰を掛けていると、たかしくんが話かけてくれた。
「うーんとね…、もう君に会えないぐらい遠いかな」
たかしくんは少し考えながら答えてくれた。
たかしくんは私よりもずっと年下だった。けれども、たかしくんは私のことを君と呼ぶのだ。
「その町についたら、連絡してくれる?」
私の言葉にたかしくんはゆるゆると首を横にふった。
どの子もそうなのだ。
私たち大人には決して「遠い町」の場所を教えてくれない。
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