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最近になって、子どもたちが夢を見たまま起きてこなくなる事例が立て続けに起こっている。子どもたちは確かに息をしていて、本当に眠っているだけなのだ。
ただ、子どもたちはみな「遠い町」に行くとだけ話して眠りにつくのだ。
「遠い町」とはどこにあるのだろう。
未だに「遠い町」から帰ってきた子はいない。単純に「遠い町」を夢の世界であると決めつけることはできなかった。子どもが「遠い町」に関する話をしたならば、注意深く聞き出さなければならなかった。
「たかしくんは、そこに行って何をするのかな?」
私はそこで何かをすることが、さも当然であるかのように尋ねた。
「何もしないよ!」
たかしくんはとびきりの笑顔で応えた。
私は少し勘づいてしまった。子どもたちの世界が大人には見えないことを。
何かをすることを私たちは普通だと思っている。
きっと「遠い町」に行ってしまった子は大人たちの不自然さに気がついてしまったのかもしれない。
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