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私は少しだけ考えて、たかしくんに笑いかけた。
「私も遠い町に行けるのかな?」
私の問いかけに、たかしくんは不思議そうな表情を浮かべた。
「わからないや。どうして、そんなことを聞くの?君も行きたいの?」
私は少し真剣な表情を作って小さく頷いた。
一つは子どもたちを目覚めさせる手がかりを探すため、もう一つには単純に好奇心が働いたからだった。
「じゃあ、目を瞑ってみせて。それから、小さな家を想像してみてね」
たかしくんの言うとおりに、私は目を瞑り、小さな家を想像してみた。屋根と扉、窓があるだけの簡素な家だ。
たかしくんの声はまだ聞こえている。
「でね。その家に向かって、行ってきますって呟くんだよ。」
行ってきます
私はそう呟いて、目を開いた。
目を開くと、たかしくんがにこにことしながら私の方を見つめていた。周りの風景も先程とは何も変わらない。
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