そこに行くのは難しい

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「お兄ちゃん。どうしたの?」 「いいや。何でもないよ」 私は、たかしくんにそう応えて少し笑った。 私は結局、遠い町には行けなかった。 いや、近い町には行けたと言ってもよいかもしれない。私が行くことができたのは、先程とほとんど変わらない町だった。ただ、たかしくんが私のことを君とは呼ばない町。 子どもたちならば、もっと遠くの別の町に行けるのだろうなあ。私は大人になってしまったから、遠くには行けなかった。 先程、私がいた町では、私がずっと眠り込んでいるのだろう。公園に吹く秋の風が眠り込んだ私の体にふりかかるのを想像して苦笑した。
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