オブリビオンの妻

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「おい、どこを読んでいるだ。いい加減にせんか」 「なあによ?この赤線の箇所、・・・・それに、この添え書き、なんなのよ?私があんたに、度はずれて旺盛な請求をしているとでもいうの?冗談じゃないわ。あんたの精力が元々劣っているだけじゃないのよ」 「それはお前の身勝手な邪推だ。その添え書きは面白いから書いただけだ。お前をモデルにしたんじゃない」 「これが面白いですって?冗談じゃないわよ。なにが面白いのよ。それに、・・・・私が病的に絶倫な妻だとでも言いたいの?あんたは私を恐れているという訳?さては、あんた、色々不自然な、無理な方法で何かしているのじゃないの?私から逃れて、隠れて、こっそり....」 「黙れ、黙らんか!言わせておけば好い気になりゃがって。ろくすっぽ読書も出来はしない。まったく....」  夫の顔面は蒼白になっていた。その顔面に、やはり、私は女の人形の気配を感じた。
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