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「社長様、壁に掛かっているあの絵画はなんというタイトルなんですか。宗教画ですよね。あの絵画を前にして、こんな猥らなことをするなんて罰当たりではないでしょうか。壁から外して何処かに仕舞っていただけないでしょうか。気になって仕方がありません」
「あれは先の社長がこの部屋に置いて行ったんじゃ。タイトルは『賢信礼』とか言ったような、画家の名は、えーっと、プレスリーかクレスピーとか言ったかの、よう憶えてはおらんが。確かに後ろめたい気持ちにはなるが、むしろ背徳な気分になって、かえって気分は高揚するもんじゃて。僕にとっては刺激になるんじゃよ。我慢してくれへんか」
「洗礼式の情景画ですよね。はっきり言って抵抗があります。むしろ、アントワーヌ・ヴァトーの愛の島、シテール島という絵画でも飾って頂けませんか?それなら私も心置きなく社長様に夢中になれますわ」
「アントワーヌ・ヴァトーか?シテール島への船出という絵画のことかな。それなら知っておるわい。この部屋の奥にある収納庫に保管されてあるからの。じゃ、それと取り換えることにしょうかの。どうせみんな贋物だし、あんたは女王様じゃから言うことを聞かんとならんからの。それで僕と一緒にシテール島へ船出をするということかの。ああ、よか、よか、堪らんわ」
「社長様、その腕の傷痕はなんですか?幾つもありますわね」
「これか、・・・・」
「どうされたんですか?」
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