279人が本棚に入れています
本棚に追加
8
八月の選抜大会で、九月に行われる新人戦に進めるのは、一校一種目二名という大会要項になっている。
百メートル種目で駒を進めることができたのは、蒼太と亘だった。戸部と水無瀬だが、惜しくも水無瀬は出場の権利を獲得できなかった。しかし、水無瀬はいつもの笑顔で、次の大会は頑張ると前向きにしていた。
ある日、司波が練習を開始する前に、部員全員を集めた。九月に行われる新人戦の話だった。
「今日は、百メートルリレーと四百メートルリレーの選手を発表する。名前呼ばれたら、前に出てきてくれ。じゃあ百メートルから。田中、渡辺、亘、片岡。四百メートルは……」
蒼太が選ばれていた。雪春は自分の事のように嬉しくなった。二、三年にも負けないくらいのタイムを練習中から出していたし、記録ノートを見れば明らかだ。しかし、亘と蒼太が隣同士で並んでいるのを見ると、僅かに不安が過った。部室での一件が脳裏に浮かぶ。大丈夫だろうか。亘は涼しい顔を浮かべているが、蒼太は……なんだか表情が険しかった。
*
「片岡、良かったな」
隣にいた亘が、声をひそめて言う。見ろという風に、顎をしゃくってきた。
「雪春がお前を見て、自分の事のように喜んでるぞ。可愛いな」
「今、そんな話やめくてください」
「カッコいいところ見せてやれよ、お前の愛しい子にさ」
「だから、やめてください!」
蒼太は僅かに声を大きくし、顔をしかめる。
「おー、こわ」
亘は唇をめくり、笑う。
「まあ、仲良くやろうや」
蒼太は亘を一瞥すると、不気味な笑みを口元に浮かべていた。亘は何かを企んでいるように見えた。でも、一体なにを……。亘は得体が知れないところがある。時々、すごく危険な感じがするのだ。

最初のコメントを投稿しよう!