風流

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 息子にせがまれてホタルを見に出かけた。  私は一度もホタルを見たことがない。都会育ちの息子もだ。だがはっきり言ってあまり気乗りしなかった。光る虫というのは確かに珍しいが、図鑑で見るのとさして変わりはあるまい。  しかし、小学生になる息子がどうしてもというので、夕食のあと私は車を出し、ホタルの鑑賞会をおこなっているという隣町の大きな緑地へと向かった。  車の中で息子は、学校で聞いてきたホタルの知識を披露し、はしゃいでいる。 「頭じゃなくて、しっぽが光るんだよ!」 「ふーん」 「光る虫なんて、すっごいよね!」 「ああ……」  子供は単純でいい。息子のその熱意が微笑ましくもうらやましくもある。昔は私も興味を持ったらすぐ行動したものだ――。そんなことを考えながら車を走らせる。
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