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グラウンドの隅に荷物を下ろし、彼はずかすかと他の部活の輪に入っていった。彼の背中を追いかけようとして、一瞬だけ陸上部の仲間と目があった。前田はそちらの方に向かっていく。
「おい、待てって」
言う頃には、前田は何やら話し込んでいる様子で、やがて一つうなずいて円盤を持ち、少し重そうにしながら投球位置に移動した。俺はそれを見ながら、円盤を貸し出した元仲間――谷崎、だっただろうか。名前は知っているがあまり話したことはない――に駆け寄った。
「なぁ、アイツなんて言った?」
「あれ、天川の知り合いなのか?」
「知り合いも何も」横目で彼を見やる。円盤の重さに少々戸惑いながら、円の中で色々とステップを踏んでは首を傾げている。「古い友達だ」
「それでか」
谷崎はそう呟いた。
「アイツ、お前を励ましてえんだってよ」
そう言って、小馬鹿にするように笑った。俺も合わせて笑ったが、前田自身の真意は読めないままだった。
「天川ぁ、見ててくれやぁ」
前田が叫んだ。俺が手を振ると、彼は円の端に構え、見様見真似なのだろう、普通よりも多く地面を蹴って、しかし深く踏み込んで、宙に円盤を放った。少しの間、それは空に向かっていたが、すぐに弧を描いて落ちていく。僅かに扇の外に出てしまい、記録なしになってしまうが、十メートル強は飛んでいる。経験なしの文化部にしては頑張った方だろう。前田は肩を押さえながら、俺の方に戻ってきた。
「肩がもげるかと思った」
「素人がやるからだ」
「そう、素人だ。猿真似だ」
意外と言うべきか、彼は素直に認めた。
「じゃあ、天川よ、お前が小説書けって言われたらどうするよ」
突然の問いに面食らってしまう。遅れて何か意図があるのだと思い、それからグラウンドの入り口を横目で見やった。
「……お前の原稿とか見て、参考にしながらやると思う。多分、一生そんなことしないと思うけど」
「俺だって、つい数時間前まで円盤投げするなんて思ってなかったよ」
彼は冗談まじりに笑った。
「要するに適材適所ってことだぁな、お前は運動部だ、俺は文化部だ。交換はできねえ」
「当たり前のことだな」
「それはそうと天川よ」
本当に文脈を読まない奴だな――心の中で呟いて、口ではぶっきらぼうに応対した。
「利き手と逆で天下を獲れたお前が、何をしょげてんだよ」
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