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「はい、いただきます」と言ったものの美歩は手をつけない。
「どした? 食欲ない?」
「いえ」
目を伏せている美歩の顔を覗き、勇翔は「お腹こわした?」と聞く。「トイレ長かったのウンコ?」
「違います!」と美歩が驚いて言うと、
「なに、アイドルだからウンコしない?」と笑う。
美歩は真顔のまま「失敗ばかりで、すみません」と頭を下げた。「足ひっぱって」
「そお? だいぶ楽できたと思うけどばあちゃん」と勇翔。「見舞いも行けたし」
「私なんか役に立てるか」
「生まれて初めてなんでしょバイト」
「ですけど」
「初日にしては忙しすぎだったね。悪いことした」
「いいえ」
「もっと楽な日からスタートすればよかった」
「そんなことありません」
「ま、客入りはなかなか読めないし。そのうち慣れるよ。だいじょうぶ」
勇翔は自信ありげにうなずく。美歩は自信なく首をひねる。
「これからもっと忙しくなるし、失敗は今のうちどんどんしとくといいよ。食べて」と勇翔は料理を見る。
「はい」と美歩はうなずき「いただきます」と箸を取った。
***
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