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アルバイトを始めたことは大学の友人たちにまだ話してなかった。言えば「なんでそのバイト?」と選んだ理由を聞かれるはずで、答えは用意していたが肝心なことは言えない。嘘をつくのはやましく先延ばしにしていた。しかし言うのが遅くなればなるほど「なんで今まで黙ってた?」となる。いつまでも内緒にしておけない、と思う。 勇翔のことを話したい気持ちはまだなかった。彼のやさしさは「好意」ではなく「厚意」で、話すとなると美歩自身の失敗談込みになる。笑い話にできるほどまだ仕事は慣れてなかった。時間も経ってない。 両親にもアルバイトのことは詳しく言わなかった。聞かれれば「だいじょうぶ」「なんも問題ない」と答え、それは心配をかけまいとして。父親は特に心配症で美歩のアルバイトに賛成なわけでもなく、心配をかければ「辞めちゃえ」と言われるのがオチだった。    *** 11月9日に電子書籍を発売しました。作者の自己紹介にあるHP、または「あらすじ」の下部から購入サイトにお進みいただけます。ぜひ。
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