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アルバイト3日目に「注文取ってみようか」と和代に言われ、美歩は「はい、やります」とうなずいた。メニューは定食と丼物が合わせて20種類。あとはビールとソフトドリンクが数種類。決して多くはない。注文はカタカナの手書きで「綺麗な字ね」と和代に褒められた。 ついでにレジの打ち方も教わり、メニュー名の書かれたボタンを押すだけの簡単操作だったがボタンの位置がすぐ覚えられない。「これができればほぼ一人前よ」と和代は笑った。それから「あぁこんな時間。そろそろ行かないと」と壁の時計を見る。 「どうぞ」と美歩はうなずいて「ご主人の入院する病院てどちらなんですか?」と聞いた。 「藤沢と辻堂のあいだ、引地川沿いのね」 「へぇ、大変ですね毎日」 「私しか見舞う人いないし」と和代は苦笑してエプロンをはずす。 「え、勇翔さんのお母さん、和代さんの娘さんは、病院いらしたりしないんですか」 南雲と潮田の名字の違いから家族関係は予想していた。 「あぁ――勇ちゃんなんも言ってない?」 「え、なんもって」 「そうね。そんなことできたらよかったんだけど」と和代は目をそらしてエプロンをたたみ奥に行く。 何か事情があるのか、悪いことを聞いたか、と美歩は思い、以後気をつけよう、あんまり立ち入らないようにしよう、と決めた。    *** 11月9日に電子書籍を発売しました。作者の自己紹介にあるHP、または「あらすじ」の下部から購入サイトにお進みいただけます。ぜひ。
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