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レポーターは若手のお笑いコンビで仲見世通りからしおさいまでをレポートしたあと店に入り席につく。
その正面に置かれたカメラの横でディレクターは美歩に合図した。
美歩はお笑いコンビにお冷やのコップを運び「いらっしゃいませ」とテーブルに置く。
「こんちは」とコンビのふたりに言われ、
「こんにちは」と会釈する。
「カワイイ」とひとりが言うと、
「看板娘。ね」ともうひとりも美歩を見て、
「いえ、そんな、全然」と美歩はびっくりして首を振る。
「アルバイト?」
「はい」
「学生さん? 大学生?」
「はい」
「いやカワイイ。オススメあります?」
「えっと、オススメは海鮮丼と、生シラス丼と」
「ほら、やっぱり海の幸」とコンビは顔を見合わせ「いいね。じゃあそれ2つで」「お願いします」とまた美歩を見る。
「はい、お待ち下さい」と美歩はお辞儀して厨房へ。
「はいOKでーす」とスタッフの声がかかり、美歩は緊張が解けて厨房の柱につかまった。「もう無理」と首を振る。
「お疲れさん」と勇翔は笑い、
「上手上手」と和代はうなずく。
「ではお料理はそちらの」とディレクターは勇翔を見た。「お孫さん出してもらえますか」
「俺?」
「よし」と美歩はグーをにぎる。
「ちょっと説明お願いしたいんで」
「だったらばあちゃんが」
「やだよ私は」と和代は奥に引っ込んでしまう。
「ヒゲ剃ってないし」と勇翔は首を振ったが、
「いやむしろ貫禄あっていいです、そのままで」とディレクターは真顔で言う。
「ウンウン」と美歩はうなずく。
それで勇翔が料理を運んだ。
***
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