6/7
前へ
/42ページ
次へ
「え、もう放送されたんですか?」 先日の撮影内容は前日の夕方ニュース番組内で流れ、美歩はしおさいに出勤してはじめて聞いた。 「録画しといたよ、そこのそれ」と勇翔はカウンターにあるDVDのケースを指さす。「持ってって見て」 「ありがとうございます」 「美歩ちゃんかわいく映ってた」と和代は笑顔でうなずく。 「ヘヘ、マジすか」 「撮って出しなんだろうね、季節物だから。お客増えるといいけど」という勇翔の希望通りその日は次々客が来た。 なかには「昨日テレビ見ましたよ」と美歩に声をかける人や「一緒に写真いいですか?」と言い出す人までいて、美歩は「え」と驚いたが断われず写真を撮られた。    *** 録画された番組を見ると美歩の撮影分はノーカットで、「いらっしゃいませ」とお冷やを運び「こんにちは」と挨拶を交わし、「カワイイ」「看板娘」とお笑いコンビにからかわれ、「いえ、そんな、全然」「アルバイト?」「はい」「学生さん? 大学生?」「はい」「いやカワイイ。オススメあります?」と聞かれて「えっと、オススメは海鮮丼と、生シラス丼と」と答えると、「ほら、やっぱり海の幸」「いいね。じゃあそれ2つで」「お願いします」と頼まれ、「はい、お待ち下さい」と厨房に戻る。 そのあと映像はしおさいの外観になり、端に地図が出て「こちらは仲見世通りから少し入った場所にあるお食事処しおさい。新鮮な魚介類を使った定食や丼物がおすすめです」とナレーションが入る。 再び店内になると勇翔が「お待たせしました」と料理の盆を持ってくるところから始まった。しかしすぐに別撮りした料理のアップになり、雑談のようなやりとりは省略されて勇翔の声が「こちら生シラス丼、こちらが海鮮丼です」と入る。「これは朝とれたシラス?」と質問する声も「ええ、毎朝届くんですが限りがあって、15食限定のメニューです」と答える声も料理の画に載り、次に勇翔が映ったのは「貴重」「いただきましょう」とお笑いコンビが箸を持った時で「どうぞ、召し上がって下さい」と微笑する。「うん、海鮮丼もいい。脂のってる」    *** 11月9日に電子書籍を発売しました。作者の自己紹介にあるHP、または「あらすじ」の下部から購入サイトにお進みいただけます。ぜひ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加