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第12章 誕生日
「東条さん、それでは行ってきます」
「おお渡辺、大連に1週間出張だったな」
「はい、機器メーカーとの打ち合わせと品質チェックがメインです」
「俺は明後日日本に帰るからしばらく会えないけど、何か問題があれば連絡してくれ」
「分かりました。では」
そう言って、渡辺と担当者は出かけて行った。
(3日間独りか・・・なんか寂しいな。シュウリンのところでも行ってみるか)
いつもの定食屋で晩飯を済ませ、シュウリンの居るクラブへと向かった。
店に入るといつも通り彼女が出迎えていつもの席に案内してくれる。
「今日はひとり?渡辺さんは?」
「今日から大連に出張なんだ」
「ええ、そうなの?大連に行ってみたいなあ。東条さんは行ったことある?」
「あるよ。今の時期は結構寒いだろうなあ」
大連は緯度的には日本の宮城県ぐらいで1月のこの時期はかなり寒い。
「じゃあ、寂しいね」
「うん、だから気を紛らわしに来たんだよ」
「―――なあ、シュウリン。明後日帰るから、明日の夜食事でもしないか?」
「うん、いいよ。仕事何時ぐらいに終わる?」
「夕方5時過ぎには帰れるから、6時に寮に来てくれる?」
「うん、分かった。じゃあ、明日お店に出るのはちょっと無理かなあ。休ませもらおうかな」
「頼むよ。何か食べたいものある?」
「うーん、フランス料理以外・・・」
「あはは、前の時苦戦してたもんなあ」
「ナイフとフォーク嫌い」
「じゃあ、また。仕事終わったら連絡するよ」
私は、彼女と食事の約束をして店を出た。
寮に戻ると何か寂しさを感じる。以前は一人でもこんなことは無かったのだが、最近は誰かといつも一緒だったこともあってか特にそう感じた。
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