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店に入ると、彼女が出迎えてくれた。
「久しぶり」
「うん、久しぶり。いつもの場所空けてるよお」
そう言って、一番奥のボックス席に案内してくれた。
(いつ見てもかわいいなあ)
「今回はどれぐらいこっちにいるの?」
「今週一杯だから後3日かな。日本にも仕事があるから帰らないと」
「大変ねえ」
「渡辺はもうしばらくこっちにいるからよろしく頼むね」
「そうなんだ。渡辺さん、1人でも良いから来てね」
「まだ無理。誰かに連れてきてもらわないと。タクシー乗れない・・・」
「そうだな、これからこっちでいる時間が長くなるから中国語を少しでも覚えた方が良いな。1人で行動することも多くなるだろうし」
「そうなんですよねえ」
「おお、居た居た」
聞きなれた声がしてふと見ると、安西がこちらに近寄ってきた。
「多分、来てるんじゃないかと寄ってみたんですよ」
「そんなこと言って、彼女に会いに来ただけだろ?」
「ははは、バレてますね。何かと忙しくてなかなか来れなかったんですよ。僕は向こうで適当にやって帰りますから・・・あ、そうそう・・・」
そう言いながら、耳打ちしてきた。
(ホステス同士の情報伝達力は恐ろしいから気を付けた方が良いですよ。他の女性を連れてるところをホステスに見られたら、直ぐに彼女に伝わりますよ)
「しないって!」
「ははは、じゃあまた明日会社で」
「東条さんの会社の人達って皆仲が良いね。なんか羨ましい」
「この店の人達は仲悪いの?」
「うーん、悪くは無いけど良くもないかなあ。ライバルみたいなとこもあるし」
「ああ、それはあるかもなあ」
こんな他愛のない会話が、忙しさで凝り固まった頭をリフレッシュしてくれる。私達は1時間ほどで店を出て帰路についた。
(また、明日から大忙しだ)
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