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彼女は24歳だと言う。出身地はここからかなり離れた農村の出身らしい。聞いたことがあるが中国では農民は貧しい家庭が多く、都市部に働きに出る人が多い。彼女もその一人だった。
昼の仕事をしていたけど辞めてクラブの仕事を始めたとか、父親には日本料理店で働いていると言っているだとか、自分の身の上話をいろいろとしゃべってくる。どこまで本当なのかはわからないが、ほとんど信用していなかった。
たまに、
「かっこいいねー。やさしいねー」
と、たどたどしい日本語で言ってくる。
日本では絶対に信用しない言葉だが、(中国では俺は格好いいのか?)と勘違いしてしまった。後で安西に聞いた話だが、完全に営業トークだそうだ。
2時間ほど飲みお開きとなったが、帰り際にシュウリンが言った。
「ちょと待って、名刺」
「ああ、名刺?ちょっと待ってね」
私は名刺を探した。
「違う、わたしの。持てくる」
持ってきた名刺には、彼女の名前と手書きで書かれた携帯の電話番号が書かれていた。
こっちでは、こういうシステムなのだろうと思った。
これが、彼女との初めての出会いである。
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