第2章 帰国前夜

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 ――――そう言えば、一人でタクシーに乗るのは初めてだな。 (上手く通じるだろうか・・・) そう思っていると、彼女が追いかけてきた。 私が中国語を話せないからタクシーに行き先を伝えてくれるらしい。  週末ということもあり、既に客が乗っているタクシーばかりでなかなか捕まらない。  その時、彼女が私の手をそっと握ってきた。(指を絡めるいわゆる恋人つなぎというやつだ) 一瞬、(え?)と思いながらそっと握り返した。タクシーがつかまるまでの、ほんの数秒間の出来事だった。 cbeae3ec-0255-4840-860f-e0eaad489f14  彼女は中国語でなにやら運転手と話している。寮の場所を説明してくれているのだろう。 「運転手に寮の場所言ってあるから大丈夫。じゃあ、1ヵ月後ね」 彼女は笑顔で言った。 「ありがとう。再見」 私は覚えたばかりの中国語を交えそう言うと、タクシーに乗り込んだ。
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