全てを曝け出す者

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 私の身体は何とか回復した。成美の落書きは、一生、消えることはないが……。  今、船に乗り、離島であるA島を目指している。  キラキラと光るさざ波を見つめながら、船の中で一人の時間を過ごす。最も、A島についたら、成美と会う事になっているから、観光気分に浸ることは出来ない。  私が回復し、仕事を再開した時に、成美から突然、電話がかかってきたのだ。会って伝えたいことがあるから、A島のB岬まで来てくれ、とのことだった。日時は成美に勝手に決められた。こっちの都合はお構いなしだな。自分勝手にも程があるってものだ。  結局、成美に言われた通りにしている。いつから、自分はこんなお人よしになったんだ。  それと、サリエル事件についてだが、警察は速未の犯行と断定し、速未を追いかけている。しかし、見つかることはないだろう。成美が殺処分をしたから、このまま行方不明で終わりだな。最も、私は分かっていたけどね。奴については、成美をおびき出す餌として使いたかったから、後回しにしただけの事だ。  反省なんかしていない。反省をするとしたら、成美を仕留めるどころか、こっちが仕留められそうになったことだけだ。成美が私を作品にしなかった事は謎だが、お陰で生き延びる事が出来た。  つまらない事を、頭の中に巡らせていたら、A島に到着した。港でタクシーを拾い、B岬へと向かう。  それにしても辺鄙な所だ。コンビニを探すのにすら、一苦労するな。ただ、自然だけは豊かだ。観光地になるような要素は見当たらないけど。  B岬の手前でタクシーから降り、歩いて成美から指定された場所へと向かう。そこは岬の先端で、断崖絶壁の筈だ。殆どの者が下を見てしまえば、両脚が震え出す場所だ。  そんな場所で私とデートとは、成美らしいと言ってしまえば、それまでだが……。
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