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景色は暗く、ヘッドライトが照らす道路しか見えない。どこに向かっているのかわからないが、同窓会の会場であるホテルへは向かっていないように思う。そしておそらく、自分たちの家でもない。
しかし、どこへ行くか尋ねようとは思わなかった。花凛は運転する駿の横顔を静かに見つめていた。
「そんなにじっと見られてると、緊張する」
「緊張って……今更?」
花凛が小さく笑うと、駿は照れ隠しなのか、少し不機嫌な顔になる。
「そりゃ、緊張するだろ。ずっと連絡は無視され続けるしさ」
「別に無視したつもりじゃ……」
「いつも、どんなに忙しくてもコールバックしてくれるのに、音沙汰なし。この時間ならいるだろうってタイミングで電話しても出ない。これ、完全に無視だと思うけど」
「……」
駿の言うことはもっともなので、花凛は何も言えない。
しかし、何を話せばいいのかわからなかったのだ。口を開けば恨み言になってしまいそうで嫌だった。時間が経てばそれなりに落ち着くだろうと思っていたのに、日を重ねるごとに辛くなった。そんな状態で駿と話せば、自分が何を言ってしまうかわからなかった。
「でも……そのうち連絡してこなくなったじゃない」
無視していたくせにこれはないなと思いつつそう言うと、駿は肩を竦めて苦笑した。
「それから死ぬほど忙しくなったの。でもまぁ、ここが正念場だったから頑張った。だから、連絡できなかったんだ。……ごめん」
「ご、ごめんなんて! 駿が謝ることじゃないでしょ? それ、むしろ私の方だし。……ごめんなさい」
思いがけなく駿から謝罪され、花凛は慌てる。まさか謝られるとは思わなかったので、ドキドキしながら駿から視線を逸らした。
「この辺りでいいか」
「え?」
駿が車を停める。辺りは真っ暗で、どこなのかさっぱりわからない。
「ここ……どこ?」
「寒いけど、出てみればわかると思う」
花凛が上着を羽織って外に出ようとすると、駿に腕を掴まれた。
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