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「……駿と一緒にいたい」
「え?」
驚いたような顔で花凛を見つめている駿に、言葉を重ねる。
「毎日、こうやって一緒にご飯を食べたい。駿はそうじゃない? 離れてても平気? それとも、離れてた方がいい?」
「そんなわけないだろう? 離れてた方がいいなんて、思ったことない」
「だったら私、ここに来てもいい?」
「え?」
一緒にいたいと思ってくれているのなら。
駿が動けないなら、自分が動けばいい。母親は反対していたが、花凛はもう大人だ。誰が何と言おうと、自分のことは自分で決める。
「一緒に住むの、ダメ?」
いいと言ってほしい、言ってくれ、そんな思いで駿を見つめる。
すると駿は、小さく溜息をついて花凛に言った。
「どうした? 急にそんなこと言い出して」
そんな言葉が欲しいのではない。花凛は何度も首を横に振る。
「急じゃない。ずっと思ってた。私はずっと駿と一緒にいたいと思ってたの。でも、駿は仕事が忙しそうだし、それでも楽しそうだし、それを邪魔しちゃいけないと思ってた。でもね、私はやっぱり一緒にいたい。駿がここにいたいなら、私がここに来ればいい。それじゃ、ダメなの?」
「花凛の仕事はどうするの?」
「辞めるよ。こっちでまた探せばいい」
「花凛も仕事、楽しいって言ってたよな?」
「でも、それより一緒にいたいから!」
感情が高ぶり、泣いてしまいそうになる。でも、ここで涙は見せたくない。泣き落としをしたいわけではないのだ。
花凛が唇を噛み締めていると、駿の腕が伸びてきて、その腕に捕らわれた。
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