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「もしかして、不安にさせてる?」
「……不安だよ。こんな風に思ってるの、私だけなんじゃないかって」
駿は花凛を宥めるように、優しく背を叩く。まるで子どもをあやすかのように。
「僕も、花凛を待たせてしまってるって自覚はある。よく……待っててくれてるなって。花凛の優しさに甘えてるなって思ってる」
「だったら……」
期待を込めて見上げたが、駿は瞳を伏せる。その顔を見て、花凛は悲しくなった。
やっぱりダメなのだろうか。どうしてダメなのだろうか。それがわからなくて、悲しい。
「もう少しだけ、待っててほしい」
「もう少しってどれくらい? 私、いつまで待てばいい?」
駿が口を噤む。いつまで、と言い切ることができないのだろう。
こういうところが真面目というか、駿は適当なことが言えない。いつまでかと聞かれれば、明確な日付までを伝えようとするし、それが約束できないなら言わない。
それはわかっていたが、今だけは適当なことでもいいから言ってほしかった。
欲しい言葉をくれない駿に、花凛はつい追い詰めるようなことを言ってしまう。
「私と同棲するの、そんなに嫌? 困る?」
駿は首を横に振るが、すぐに花凛を見て、項垂れるように答えた。
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