すれ違う心

8/9
前へ
/46ページ
次へ
「もしかして、不安にさせてる?」 「……不安だよ。こんな風に思ってるの、私だけなんじゃないかって」  駿は花凛を宥めるように、優しく背を叩く。まるで子どもをあやすかのように。 「僕も、花凛を待たせてしまってるって自覚はある。よく……待っててくれてるなって。花凛の優しさに甘えてるなって思ってる」 「だったら……」  期待を込めて見上げたが、駿は瞳を伏せる。その顔を見て、花凛は悲しくなった。  やっぱりダメなのだろうか。どうしてダメなのだろうか。それがわからなくて、悲しい。 「もう少しだけ、待っててほしい」 「もう少しってどれくらい? 私、いつまで待てばいい?」  駿が口を噤む。いつまで、と言い切ることができないのだろう。  こういうところが真面目というか、駿は適当なことが言えない。いつまでかと聞かれれば、明確な日付までを伝えようとするし、それが約束できないなら言わない。  それはわかっていたが、今だけは適当なことでもいいから言ってほしかった。  欲しい言葉をくれない駿に、花凛はつい追い詰めるようなことを言ってしまう。 「私と同棲するの、そんなに嫌? 困る?」  駿は首を横に振るが、すぐに花凛を見て、項垂れるように答えた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加