那須野が原の冬の空

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 まるで今にも降り注ぐかのように、無数の星が瞬いていた。  容赦なく吹き付ける冷たい風、底冷えする寒さをものともせず、生徒たちは一心不乱に夜空を見上げている。 「すごい……」  自分の語彙力のなさ、表現力のなさにがっかりしてしまう。しかし、他にどう言えばいいのかわからなかった。  高校の校外学習、希望者のみ参加で行われた「天体観測合宿」に参加した藤田花凛(ふじたかりん)は、観測場所として選ばれた那須町共同利用模範牧場から見える夜空を見上げ、歓声をあげた。  去年も行われたこの合宿に、花凛は参加していない。というのも、仲の良い友だちが誰も参加したがらなかったからだ。 「せっかくの休みに学校行事なんてダルい」 「あんなとこ何もないし、寒い」  というのが、友人たちの言い分だ。確かに一理ある。  しかし、参加した他のクラスメートは目をキラキラと輝かせ、星の美しさについて話していた。そして、希望者のみ参加の校外学習であるため、普段関わりを持たない生徒同士が知り合うきっかけにもなり、学年や部活動を越えて仲良しになれる、と評判になった。  それを聞いて、花凛はこの天体観測合宿に興味を持つ。部活をやっていない花凛にとって、学校生活はクラス内が全てだ。何となくつまらないと思うが、二年の冬という今頃になって部活に入るというのも難しい気がする。  クラス外にも繋がりが欲しい。そんな風に思っていた花凛にとって、この行事は途轍もなく魅力的に映った。
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