268人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
***
同窓会の当日、那須町のとあるホテルの宴会場に顔を出した花凛は、その華やかさに驚いた。思ったよりも大勢人が集まっている。クラスの同窓会ではなく、学年の同窓会だからだろうか。宴会場にはそれぞれにめかしこんだ同級生たちがひしめき合っていた。
「花凛! 久しぶり!」
花凛に電話をかけてくれた友人が駆け寄ってくる。その友人につられるように、他の友人たちも側に来てくれた。
「電話ありがとう。同窓会のこと、本当にすっかり忘れてたの」
「忘れるくらい忙しかったんだね。でもよかった、来てくれて! 会えて嬉しい!」
こんな風に喜ばれると、来てよかったなと嬉しくなる。
卒業してから十年も経つと、それぞれに見た目も変わる。しかし、中身がそれほど変わっているはずもなく、少し話をすればあっという間に時間が遡る。
旧友たちと話をするのは、思ったよりずっと楽しかった。来てよかったと思っていると、またもや懐かしい面々と再会することができた。
「藤田! 久しぶり!」
花凛に声をかけてきたのは、天文部の部長をしていた小林圭吾だった。その後ろには、同じく天文部だった坂田祐二に遠藤梨絵もいた。
「小林君、久しぶり! 坂田君に梨絵ちゃんも!」
「花凛ちゃんだー! 久しぶりーっ」
梨絵が花凛に抱きついてくる。それを受け止めながら、花凛は小林に笑みを向けた。
「小林君、北海道から?」
「うん。こっちに戻るのは久しぶりだし、いい機会かなと思って」
小林は駿と同じく東京の大学に進学後、そちらで就職したのだが、今は札幌勤務になっていると風の噂で聞いていた。
「あれ? 駿は?」
「ほんとだ。柏木君は来てないの?」
小林と梨絵に聞かれ、花凛は苦笑いを浮かべる。花凛と駿が付き合っていたことは、天文部の全員が知っていた。聞かれるのも無理はない。
最初のコメントを投稿しよう!