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「天球儀……見たいな」
ポツリと花凛が呟くと、皆が一斉にこちらを見る。そして、笑いながら言った。
「見たいって言っても、部室にあるんだし」
「今やもう部外者。いくら卒業生とはいえ、簡単に校舎には入れないよね、きっと」
皆の言うとおりだろう。それでも、見たいと思ってしまった。
「誰に許可を取ればいいんだろう?」
「花凛ちゃん?」
「許可を取れば、入っても大丈夫だよね?」
「いやいやいや、許可が取れたとしても、夜の学校に行くの? 不気味だよ? 怖いよ? そんで、めちゃくちゃ寒い!」
今は二月。冬、真っ只中だ。
日中は暖房で温まっている教室も、夜には当然暖房は切られているわけで、おそらくかなりの寒さだろう。それはもう、凍えてしまうレベルで。
しかし、一度見たいと思った気持ちは大きくなるばかりで、抑えることができなくなっていた。
「うん、わかってるけど……」
その時、小林が言った。
「それでも、見たいんだ?」
「小林?」
「小林君? え? マジで!?」
他の皆はギョッとした顔で小林を見ている。花凛も大きく目を見開いた。
小林は小さく笑うと、携帯を取り出して電話をかけ始める。
「え、嘘……」
梨絵が小声で呟く。花凛も驚くばかりだった。
小林が電話をしている相手は、天文部の顧問だったからだ。
「はい、そうなんです。先生の方から話を通していただけませんか? はい、はい……」
しばらく話をした後、小林が通話を終えた。そして、花凛に向かってニッと笑う。
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