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小林は車を止め、一旦外に出て校門を確認する。鍵などはかかっていなかった。門を大きく開き、再び車に戻って中へと入っていく。
「松下先生が開けてくれたのかな?」
「校門は元々開いてるんじゃないかな? 田舎だし、わざわざ夜に忍び込もうって人もいないだろうしさ。こういうの、平和でいいよな」
花凛もつくづくそう思う。
さすがに家の鍵を開けっ放しということはないが、田舎は周りの人たちの信頼で築かれている世界で、都会に比べればまだ警戒は薄い。それに、多少ガラの悪い人たちがいたとしても、夜中の学校に忍び込んで窓ガラスを割ったり、悪さをするといったようなこともほとんど聞かない。だからこそ、校門に鍵がかかっていないのだろう。
「でも、さすがに校内はかかってるよね?」
花凛が尋ねると、小林は笑って頷いた。
「そこはさすがにね。でも、今日は松下先生が遅くまで残ってたみたいで、開けていってくれてるから大丈夫。先生はそのまま帰るって言ってたから、会えないけどな。OBが来るっていうのに、アッサリしたもんだ」
天文部顧問の松下は、よく言えば大らか、悪く言えばズボラな教師だった。
部室の鍵は部長だった小林に預けていたし、夜に生徒が学校に来ることに対しても黙認していた部分がある。なので、天文部はよく夜に学校へ来て、星の観測を行っていた。おそらく今も変わっていないだろう。
小林のことは信頼している。だから学校を開けたまま家に帰ってしまった。二人が再び学校を出る際には、小林の方からもう一度連絡を入れることになっているらしい。一度家に帰ったというのに、戸締りのためにまた学校へ来るとは、なかなか面倒な話だ。
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