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「なんか、面倒くさいことをお願いしちゃって……ちょっとかわいそうかも、松下先生」
「細かいこと気にしないし、生徒にも面倒なことを押し付けることがあるから平気。お互い様」
「そっか。そういえば小林君、なんだかんだとよく頼まれごとしてたもんね」
「そうそう」
そんな他愛のない話をしながら、二人は校内へと入っていく。小林の言ったとおり、すんなりと中に入ることができた。
まだ松下が出てからさほど時間は経っていないらしく、暖房の暖かさが残っている。
「まだちょっとあったかいね。よかった」
「ほんとに。この季節に暖房全くなしだと、凍えるよな」
朝晩はかなり気温も下がるし、本気で凍えるかと思う。じっとしていると、そのまま動けなくなりそうになるのだ。
こうやって歩いていても、身体は小刻みに揺れているし、手を何度もすり合わせてしまう。
「でも、なんか懐かしい。高校の頃を思い出す」
「うん。あの頃もこうやって震えながら登校してたよな」
朝はさほど暖房が効いていない。震えながら登校し、教室に入ってもしばらくは上着を着たままだった。そして、仲良し同士で肩を寄せ合い、寒いねーなどと言うのが、おはようの挨拶代わりになっていた。
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