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「……何て言っていいのかわからないけど、駿は藤田を大事にしてた。それは、今も変わらないと思う。駿が今何を考えてるのか知らないけど、藤田との未来を考えてないわけはない……と俺は思う」
時折言葉を詰まらせながらそう言う小林に、花凛は柔らかく微笑む。
心優しく面倒見のいい元天文部部長は、高校時代からそうだった。誰かが悩んでいたり、元気がなかったりすると、さりげなく寄り添い、励ましてくれるのだ。だから皆、小林を信頼していたし、部長として慕っていた。変わらないな、と、また懐かしい気持ちになった。
その時、花凛の携帯が小さな音を立てる。取り出すと、電話がかかってきていた。
「……」
なかなか電話を取ろうとせず、表情を曇らせる花凛を見て、小林が画面を覗き込む。そこに表示されていたのは、駿の名前だった。
「駿からじゃん」
「うん……」
これまで連絡してこなかったというのに、今頃なんだろう?
最悪の事態が思い浮かび、花凛の指は動かない。それを見兼ね、小林が花凛の手から携帯を奪い取った。
「小林君!」
「もしもし、駿か?」
小林は花凛の代わりに電話に出てしまった。花凛は為す術もなく、そのまま側で固唾を呑んで見守るしかない。
「お前、何やってんの?」
先ほどとは違う小林のきつい口調に、花凛はハラハラしながら見つめる。
やはり自分で取るべきだったと悔やんでいると、小林の口から驚くべき言葉が発せられた。
「今、天文部の部室に藤田と二人でいる。お前がいつまでもちんたらしてるなら、俺、もう遠慮はしないけどいいか?」
花凛は目をぱちくりとさせる。一体何を言おうとしているのか。
小林は花凛をチラリと一瞥して、言った。
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