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「俺さ、言ってなかったけど、お前が藤田連れてきた時から藤田のこと、好きだったんだよ。お前に遠慮して言えなくて、封印してたんだけどな。でも、お前がいつまで経っても藤田をほったらかしにしてんなら、もう遠慮しなくていいよな? 俺が藤田のこと貰うけど、いいんだよな?」
花凛は息を呑んだ。
小林の言っていることは本当なのだろうか。
急に明かされた話に、花凛はただ戸惑うばかりだ。何か言おうと口を開くが、何と言っていいのかわからない。
花凛が顔を俯けていると、スッと携帯が差し出された。いつの間にか、通話は終わっていたらしい。
「小林君……」
おずおずと顔を上げると、小林は小さく肩を竦めて笑っていた。
「ごめん、ビックリさせて。でも、これぐらい衝撃的な内容じゃないと、ショック療法にならないだろ?」
「ショック療法……?」
小林は天球儀を動かしながら、そこに示された星座を眺めている。
花凛はそんな小林をただじっと見つめていた。小林は息をつくと、再び肩を竦める。
「藤田のことを大事にしてるのは知ってるけど、あいつは藤田を信じて安心しきっている。藤田は自分から離れていかないって。それはつまり、自分が藤田から離れるつもりがないからそう思うんだろうけど、それはある意味、怠慢だ」
「怠慢……?」
「藤田に想ってもらうのが当たり前になってるってこと。特に今は離れてるんだし、自分の気持ちをちゃんと伝えておくべきで、それを藤田にもわかってもらえるように努力しなきゃいけないのに、あいつはその努力を怠っている。だから、藤田は不安でたまらなくなってる。そりゃそうだよな、こっちの友だちはもう結婚してるやつも多い。そんな中で、十一年付き合ってる彼氏と何の進展もなきゃ、不安に決まってる」
「……」
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