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「それだと寒いだろ」
側にあった花凛のマフラーを手に取り、駿が花凛の首に巻く。そして、手袋を手渡した。
「少しじゃないの?」
すぐに車に戻ってくるのかと思ったので、上着だけでいいかと思ったのだ。
駿も上着にマフラー、手袋を身に着け、車のドアを開けた。
「うわ……さむっ!!」
外に出た瞬間、二人はそう叫び、身を縮こませる。
駿は花凛を引き寄せ、肩を抱いた。こんな風に身を寄せ合っていても、足元から寒さが忍び寄ってくる。
「底冷えするな」
「ほんと……。風がないのが救いかも」
気温はかなり下がっているようだが、風はほとんどない。これで風があれば、すぐさま車に避難しなければきっと凍えてしまう。
「花凛、ここがどこかわかる?」
駿に聞かれ、花凛は辺りを見渡した。
車の中からではほとんど見えなかった景色が、目が暗闇に慣れてきたせいで、段々とその姿が露になってくる。
かなり開けた土地、足跡のない綺麗な雪が一面に広がっていた。この光景は目にしたことがある。花凛は思わず空を見上げた。
「わ……あ……」
雲一つない宇宙がそこに広がっていた。星々が鮮やかに煌き、瞬いている。空は無数の星で埋め尽くされ、まるで今にも降ってきそうだ。
あまりの感動で、それ以上言葉が出てこない。そして、胸がぎゅっと詰まる。今にも涙が零れそうになった。
「ここ……」
震えた声で駿を見上げると、駿は慈しむような優しい顔で花凛を見つめていた。その表情に、息が止まりそうになる。
駿は笑いながら、花凛の耳元で小さく囁いた。
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