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「……」
「ご、ごめんなさいっ!」
花凛が慌てて謝り、彼の様子を窺うと、彼は雪の上に大の字になって夜空を眺めていた。
「あの……」
恐る恐るまた声をかけると、彼がやっとこちらに視線を寄越す。そして、フッと表情を和らげた。その優しげな笑みにドキリとする。
「えっと、冷たくない?」
大の字のままの彼に向かって尋ねる。すると、彼は慌てて飛び起きた。
「冷てっ!」
ベタベタとした雪ではないが、それでも少し時間が経つと湿ってくる。彼は雪を払いながら、照れたような顔を見せた。
「そっちは大丈夫?」
「え? うん、私はすぐに起き上がったから。それより、急に声かけてごめんなさい」
改めて謝ると、彼は謝らなくていい、とまた優しく笑う。
目を見張るほどのイケメンというわけではないが、真面目で誠実そうな雰囲気は、好感度が高い。別に狙っていたわけではないが、いいな、と思ってしまった。
「僕も巻き添えにしちゃってごめん。えっと……」
彼が花凛を見て、困った顔をした。花凛は咄嗟に答える。
「藤田花凛です。二年」
すると彼が、ホッとしたような顔をした。花凛の答えは正解だったらしい。
「僕は柏木駿。僕も二年。藤田さんは何組?」
「三組」
「そっか。僕は一組。クラスが違うとわからないもんだな」
「うん、そうだね」
駿は再び空を見上げ、息を吐いた。白い息が冷たい空気に溶けてゆく。
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