那須野が原の冬の空

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 花凛は笑って駿の手を取る。  すでに手遅れかもしれないが、これで風邪をひいても構わないと思った。それほど、雪の上から見上げた景色は壮大だったのだ。この合宿で、一番忘れられない思い出かもしれない。  駿を見ると、双眼鏡で空を見ていた。そういえば、倒れた時、大丈夫だったのだろうか。 「双眼鏡、大丈夫? 濡れたりしてない?」  心配で尋ねると、大丈夫と駿が言って、双眼鏡を花凛に手渡す。 「え?」 「それで見ると、すごくよく見える。面白いと思う」 「……ありがとう」  花凛は双眼鏡を空に向け、レンズを覗き込んだ。そこには、宇宙が広がっている。どこを見ても星だらけ、いつまででも見ていられると思った。 「うわっ」  レンズを覗いたまま動いたので、バランスを崩す。駿は咄嗟に腕を出し、花凛の身体を受け止めた。 「ごめん!」 「動くときは双眼鏡を離さなきゃダメだ。でもまぁ、気持ちはわかるけど」 「……すごいね。この中に宇宙が広がってた」  花凛の言葉に、駿が何度も頷いて同意する。 「そうそう、そうなんだよ!」 「私も双眼鏡、用意してくればよかったなぁ。でも高そう」 「安くはないかもだけど、手が出ないほど高いってわけでもない。これ、ハイアイポイントっていって、双眼鏡の接眼部から目を離しても、すべての視野を見通せる機能がついてるんだ。だから、眼鏡をしたままでも全然平気だし、肌に触れるのが嫌だって場合も離してて大丈夫。内部に窒素ガスが封入されているから、水分が入りにくくなってるし、アウトドアにも適している。おすすめ」  まるで店員のようなセールストークに、つい笑ってしまう。
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