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「天文部、入りたい!」
すると、駿の口角がクッと上がる。
「じゃ、決まり。毎週、月・木が活動日だから、来週の月曜日に部室に来ればいい。部室、わかる?」
「えっと、どこかな?」
駿は少し考え、言った。
「わかった。最初だから連れて行く。放課後、三組に行くから」
「いいの?」
「いいよ」
駿の笑顔に、また花凛の心臓がドキリと音を立てる。そして、いつまで経っても鼓動は速いままで、ちっとも落ち着いてはくれない。
そんな花凛の心中などまるで気付かないように、駿はそれからいろいろな話をした。
星座早見盤の見方や、星座の話、神話など、全てが星に関わることばかり。よほど星が好きなのだろう。星の話をしている時の駿は、一見した時の印象とはまるで違っていた。
夢中になって話をする駿を眺めながら、花凛もどんどん引き込まれていってしまう。
この天体観測合宿を機に、花凛は天文部に入部する。その後しばらくして、三年になる頃には駿と付き合い始めていた。
高校二年、十七歳の冬。那須町共同利用模範牧場の天体観測。
星が雨のように降り注ぐ、那須野が原の空の下──二人の恋は始まった。
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