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消えた男の子
「危ない!!」
俺には、情けないことにも大声を出すことでしか少年を助ける方法が無かった。でもその代わり、腹が裂けるくらいの大きな声を出した。
でも、少年は一切の減速を見せない。
崖まで10m、5mと距離が無くなっていく。
少年は止まるどころか加速している。
想像したくないけど、あの子は…
少年からの崖までの距離がとうとう1mをきり、足を踏み潰すように思われたその時ーー
ーー少年が、消えた。
「…え?」
思わず間抜けな声が出た。慌てて崖の傍へ駆け寄る。下を確認すると、おおよそ100mくらいだろうか?
とても人が助かる高度ではないが、あの子の姿は見当たらない。
さっきまでそこに居たはずなのに…なぜ?
困惑していた俺は、何を血迷ったか崖の方へと足を踏み出してしまった。
いや、踏み出したというよりは踏み出させられた、の方が適切なのかもしれないが…。
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