接地

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接地

何かに惹かれるように右足を踏み出す。 着地できる場所はない。 案の定右足は接地しようとする意思を空回りしてそのまま崖の下へ落ちていく…… …ことは無かった。 するはずのない接地を果たした右足は、そのまま俺の意識外に進んでゆき、それにつられるようにして俺の左足も前へと踏み出し…… …決して落ちることなく、左足もまた、接地を果たす。 そのまま何も無いところ…いや、何も無かったはずなのにいつの間にか道が出来てしまっていた場所を、例の如く意識外に進んでゆく両足。 まるで、見えない糸に誘引されているように独りでに動く足に意識を取られている間に、目前の変化に気付くのが一瞬遅れてしまった。 俺がそのとき目の当たりにした光景とは、 茅葺きの合掌つくりの屋根でできた家が建ち並ぶ、大きな集落だった。 それこそテレビやゲームの中でしか見た事のないような、古民家である。 俺は一瞬、五箇山や白川郷に来たのかと錯覚したが、自分の体の大きさがころりと変わってみたり、「ピカイア」なる知らない生物がいたり、何よりたった今起こった、超常現象などから現代日本の選択肢を放棄する。 じゃあ、過去か未来の日本なのか? ん?過去……? あ、思い出したーーー ーーピカイアは、古生代に生息してたやつだ。
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