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■21
「に、妊娠!?」
私は叫んだ。叫んでしまってから恥ずかしくなって口を押えた。……どういうことだ。その発想は出てこなかった。『50代の女性』と『妊娠』というワードは、なかなか結び付かない。
「50代の女性が妊娠って……あり得るんですか」
私は『妊娠』の部分をちょっとだけ小声で行ってみた。店内には私とトウノさん以外の人間がいないのにもかかわらず。
「不可能ではありません。閉経していなければ」
トウノさんは特に恥じらう様子はない。
「じゃ、じゃあ犯人は、上郷さんが妊娠したから、殺したってことですか」
「まだ仮説です。でなければ、胴体部分だけが見つからない理由がわかりません。おそらく、今でも上郷さんの遺体には胎児の……」
トウノさんはそこで口を閉じた。私はだいぶ深刻な表情をしていたのだろう。
「……すみません。あまり愉快ではない話題でしたね」
私は、想像してだいぶ陰鬱な気持ちになっていた。
「上郷さんは手が切り離されただけで、上郷さんと赤ちゃんは無事っていう可能性は……」
「ないですね。腕の切断部位から生体反応はなかったそうですし」
申し訳なさそうな顔で即答されてしまう。生体反応ってなんだったっけ。ああ、生きた人間から切り落としたか、死んだ人間から切り落としたか、っていう話だったっけ。
「……ユウさん、大丈夫ですか。顔色真っ青ですよ」
「すいません。私、流産とか、赤ん坊が死ぬ話に弱くて」
自分でマウスの胎児を大量に殺してたくせによく言う。私は顔を伏せた後、顔を上げた。
「だけど、トウノさん、なんでわかったんですか」
上郷さんは、6本指の腕が見つかったきりで、行方不明の扱いだ。彼女が妊娠していたかどうかなんて、彼女に近しい人物しかわからないだろう。
「……産婦人科の知り合いに無理を言って少々頼みまして」
トウノさんは、言い辛そうに言う。
「産婦人科に、知り合い?」
私は首をかしげる。そこの中央病院のことだろうか。
「今は花屋ですけど、以前、あそこの病院で働いていたことがありまして」
トウノさんが首をかく。辞めた職場の話はやっぱり言いづらいのだろうか。
「病院で働いてたんですか?」
「ええ、以前は医者をしていました」
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