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■22
私はトウノさんをまじまじと見つめた。白衣を着ているトウノさんは容易に想像できる。
「ご存じの通り、医師はだいぶ忙しい職業で」
トウノさんが続ける。
「研修医時代に体を壊しちゃって。今は知り合いのツテで、ここで働かせてもらってるんです」
「そうだったんですか」
私は何と答えるべきかわからなかったのでそう答えておいた。対面の人物が、退職した理由を述べているときは、なんだか同情するような、可哀そうな、そんな気持ちになってくる。もっとも、私は普段逆の立場なのだが。
「それで、産婦人科のお医者さんと連絡を?」
「いいえ、看護師さんですね。世間話のついでに上郷さんの話が出まして。珍しいケースだったから印象に残っていたようです。もっとも、プライバシー保護の観点で、こういう話は本当だったら広めてはいけないんですが」
トウノさんが申し訳なさそうに言う。
「ユウさんも、故人のプライバシーは尊重してくださいね」
いい人である。
「わかりました」
「まぁもっとも、警察の人には話して、捜査には当たってもらうんですけどね……」
その時入店のベルが鳴って、店内にお客さんが入ってきた。トウノさんは、ぱっと私から目をそらす。
「いらっしゃいま……ああ、やっときたか」
トウノさんがいきなり砕けた口調になったので、私は振り向いた。そういえば、この店に来たのは、トウノさんが『会わせたい人がいる』と言っていたからだった。
そこにいたのは、久しぶりに会う顔だった。
制服は着ていないのに、一目で警官だと分かるスーツと顔つき。一瞬見ただけでは、男か女だかわからない体つきと顔つき。岸一さんだった。
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