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■28
「本当に、ここまででいいの?」
近くのコンビニに止めてもらうと、私はぺこぺこと謝った。
「いいんです、あの、えっと、ほら、うち、車が入りにくいところのアパートなんで、ちょっとお金下ろさなきゃで!ついでに傘も買っていこうと思いますし」
私は見るからに挙動不審で一気にまくし立ててしまった。
「傘なら貸すよ」
トウノさんは困惑しながらもにこやかな顔である。
「え、あの、いいです。トウノさんが濡れちゃいますし」
「大丈夫。2本持ってるから」
置き傘と言うやつか。用意周到である。
「あの、その、悪いですし……」
「大丈夫大丈夫」
といって、トウノさんは迷わず高そうな傘を差しでしてくる。紳士向けの立派な傘だ。コンビニのビニ傘とは違う。ちょっと重い。
「ええっと、ありがとうございます。今度返しに行きます」
「よろしくね」
私がゆっくり傘を差してから車を出ると、雨だというのにトウノさんは窓を開けてくれた。
「ではまた今度」
花を振って、トウノさんは車を発進させていった。しれっとまた会う約束をしてしまった。私は紳士物の傘をさしたまま、しばらくコンビニの前で道路を眺めていた。まだトウノさんの車のにおいがする。そして、私は静かに確信していた。
トウノさんは普通の人間ではない。
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