ケリドウェンの燈油

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「…ふふ、まず貴方が何者なのか、それから教えて貰っても…良い?」 「…え?僕?」 と男は想定外だったのか、意外とでも言いたげなキョトン顔を晒して、自分自身の顔に向けて指を指して見せたが、私がそれに対しコクっと笑顔で頷くと、「…あ、そっか」とここにきて漸く気付いたらしく、またもや照れ笑いを浮かべながら答えた。 「あはは、そっかそっか。まだそういえば、自己紹介すらまだしていなかったね?…コホン」 と男は、途中まで自分自身にウケてたのか笑みを絶やさずに話していたのだが、区切りを付ける意味でか一旦咳払いを入れると、今度は柔和な微笑を浮かべつつ続けて言った。 「自己紹介…って言っても、実は中々難しいんだけれど…うん、まぁ先代から受け継がれてきた、僕の一代前の人から貰い受けた名前で言えば…僕の名前は『ケリドウェン 』。覚えづらい名前だろうけれど、名を名乗れと言われたら、僕にはこれしか言いようがないから、まぁ…ふふ、よろしくね?」 と、少し自嘲気味に笑いながら自己紹介を終えたのを聞いて、私はふと、その名前に覚えがあるのに気づいた。 …って、自分の夢なのだから、覚えがあるのは当たり前なのだが、夢の中での私は純粋にそう思い至ったので、そのままに我知らずと口に出した。 「ケリドウェン…って、あのケルト神話に登場する魔女の名前じゃ…あぁー」 と私はそう言いながら、ふと男の背後にズラッと並ぶ大量の甕と、そして竈門の上に置かれた大釜に目がふと言った瞬間、納得の声を漏らした。
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