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”慣れてる”と言いたげだ。
しばらくはそうして視線を交わし合っていたのだが、
「…ねぇー?」と、出し抜けに横からナニカに話しかけられたので、私は少し驚きつつ顔を向けた。
「な、何?」
と私が聞くと、ナニカは顔の暗闇部分に細長い三日月を浮かべながら続けて言った。
「何?じゃないよー。…ふふ、ほら、自己紹介をされたんだから、言い出しっぺのあなたも返さないとでしょー?」
「あ、あぁ…ふふ、それもそうね」
と、今更にして当たり前のことを指摘された私は、クスッと一度笑みを零すと、そのまま表情を保ちつつ、顔を男に向けると自己紹介をした。
「え、えぇっと…私は琴音…って言います。…ふふ、よろしくね」
名字を入れたフルネームで言うべきか、これも今更だが、いくら義一にそっくりとはいえ初対面の相手に、馴れ馴れしくタメ口で行くべきかどうか、それらなどをアレコレと考えあぐねた結果、こんな風なチグハグな紹介となってしまったが、それを聞いた男はというと、「うん、よろしくね」と訝る事もなく笑顔で答えてくれた。
「えぇ…あっ」
と、男との自己紹介が漸く済んだのも束の間、その直後に、先ほど出た話の内容が不意に頭に過ぎった私は、いくらでも質問しても良いと許可を貰っているというので、早速それを口にしてみる事にした。
「あ、あの…さ?さっきそのケリドウェン って名前を引き継いだって話してたけれど、それって…?」
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