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”珍しく”静かに私たち二人を静観してはいたのだが、実際に表情は伺えずとも、ニヤニヤしてるかはともかく、少なくとも好奇心に満ちた顔つきでいるのは”感じられた”。
「はい、ご苦労様」
と男がニコッと目を細めつつ言うので、
「あ、いや、別に…」
と、自分でも可愛くないと思う態度で返していたが、スッと視線だけ横に逸らして、その視界に入ってくる物をそのまま口に出した。
「これって…甕だよね?」
と、見たままの事実確認…とも言えないほどに幼稚な言葉を投げかけると、それでも男は少々愉快げな笑みにギアを変えつつ答えた。
「うん、その通り。で…ね?ちょっと見て欲しいんだけれど…」
と口にしながら、男が一つの甕に広げた手を触れてみせたので、言われた通りに、手の当たるその付近に目を凝らしてみた。
以前にも触れたように、それなりに篝火や竈門などの光源のお陰で真っ暗ではなかったのだが、それでもやはり薄暗さは否めない様な照度だった。
だが、これも不思議な事に、そんな中でも目を凝らしてみると、まるで光の満ちた屋外や明るい部屋にいるのと変わらないほどに、目の前の物が徐々に見える様になっていった。
と、同時に「…あ」と私は、その甕の側面を見て思わず声をあげてしまった。
というのも、初めてこの塔の中に来てから、それなりに自分で甕についても観察してきたと自負していたのだが、甕の一つ一つに木製の板で蓋がしてあるのにも初めて気付いたのと同時に、それよりも、焦げ茶色一色の無地だと思っていたのが、何やら言葉らしき物が側面に薄っすらと書かれていたのに気付いたからだった。
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