ケリドウェンの燈油

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「え?」 と私の言葉を受けた瞬間、男はキョトン顔を浮かべていたのだが、それもほんの一瞬のことで、すぐに明るく笑ってから答えた。 「あー、あはは。まぁ僕の今の説明を聞いたらそう思うよね?…ふふ、僕の説明不足が悪かったけど、実はね、この”ケリドウェン”って名前を引き継ぐ前には、勿論というか元の名前があってね?その名前がここに書かれているんだよ…」 と男はそう言い終えると、甕から手を離し、そして徐にゆったりとした足取りで歩いて行ったので、私も後をついて行った。 「これも…これも…これも…ね」 と、一つ一つの甕の表面を労わる様に、愛おしげに手で軽く触れつつ撫でながら歩いて行くのを、着いて行きながら後ろから見ていた私も、それらに目を向けてみると、全ての甕の側面に文字が書かれていた。 初めのうちは、先ほど具体的に触れたのと同様に読めない字が続いていたのだが、しかし段々と進んでいくに従って、見慣れたアルファベットが出てきたり、これまた日本人の私には馴染み深い漢字で書かれていたりした。 男は、それからこれといって暫くは口を聞かなかったが、しかしそれでも私としては興味深げに、勿論歩きながらだったので精査は無理だったが、目につくものを片っ端から眺め回していたので、気まずさなどとは無縁だった。 …ふふ、そう眺めていく中で、本当は、甕については後で別口に訊こうと思っていたのだったが、まぁ結果オーライという事で、そのまま流れに任せる事にした。
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