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と、そんな風に、実際には数分間くらいのものだろうが、上から見ると円形の壁伝いを、曲線に沿って歩いていたのだが、ふと棚の端に辿り着いたのか、男が漸く足を止めたので、目測で約五歩ほど後ろで私も止まった。
棚の端のすぐ脇には竈門があり、下の穴からは炎の光が漏れ出ており、その上には例のファンタジーな大釜が乗っかっているのが見えた。
「…で、”完成品”としては、これが今のところ一番最後の物だね」
と、男はまたしても甕の表面を何度か撫でて見せていたのだが、ふとこの時、私の思い違いかも知れないが、何だかその様子が他の甕に対する時よりも、何と言えば良いのだろうか…うん、若干その手付きから思い入れの強さが分かる様だった。
甕を見下ろす男の顔を私は横から見ていたのだが、その目元がやんわりと細くなっていたせいもあるのだろう。
「完成…品…?」
と私はそんな感想を覚えつつも、実際の行動としてはそう口にしつつ、三歩ほど男に近寄り同じ様に甕を見下ろしたのだが、ふとその時、他の甕とは違う点があるのに気付いた。
というのも、先程もチラッと触れたが、これらの甕の上部には木製と思われる板を蓋がわりに閉じられていたのだが、この甕だけは蓋が外されており、中身がしっかり見えていたのだ。
それから私は、男が何も言わないことを良いことに、また一、二歩ほど前に踏み出すと、真上から目を落として見た。
中には、薄暗さのせいもあるのだろうが、真っ黒に見える液体が、ざっと見た感じでは甕の九割に近いほどに入っているのが確認出来た。
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