一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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「こんなとこ、前からあったか……?」  レンガで造られたアーチ型の入口。  そのアーチを、エメラルドグリーンのアイビーの葉と蔦がびっしり覆っている。まるで緑のトンネルだ。  入口の両脇には、黄色やピンクのバラの鉢植えが並べられている。  白いアンティークの鳥かごの中に、小さな多肉植物の寄せ植えが飾られて置いてあるのも、素敵だった。 (街の中に、森の入口がある)  自然と、そんな感想がわき上がる光景だ。  不意に、アーチの向こう側から、さわやかな風が吹いてきて帆影を抱擁した。  風が薫る。  バラと、焼き菓子と、それから──森の匂い。  どくり、と、ひとつ帆影の鼓動が鳴った。
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