一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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「──まさかな」  まさか、本当に、森へとつながっているはずがない。ここは、名古屋の街中なのだから。  そう思うのに、高鳴る鼓動がおさえられない。こんな気持ちは、いつぶりだろう。  よく見ると、入口の外、イーゼルに立てかけられた小さな黒板に、店名が書かれてあった。  美麗な筆記体の文字で『探偵喫茶 fairy-tale』と。  カラフルなチョークで繊細に描かれた、妖精の少女の絵も見事だ。 (fairy-tale──ああ、フェアリーテイルか)  アルファベットの読み方に合点のいった帆影は、首をかしげた。 「探偵喫茶ってなんだ?」  おまけに、店名の真下に、謎のメッセージまで添えてあった。 『行方知れずの登場人物、捜します』
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