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室内に広がっていたのは、一面、鮮やかな緑の世界。
温室のような明るい空間だった。
一本の狭い通路の両脇には、背の高い木々やサボテンの植木鉢が所狭しと並んでいる。
天井からも、いくつもの植木鉢がシャンデリアのように釣り下がっていた。どこを見ても、青々と輝いている。
ハート型の葉っぱがかわいい小さなサボテンは、なんという名だろう。
かがんでサボテンを眺めていると、不意に、誰かに見られている気配を感じた。
「──っ?」
思わず振り返る。
誰もいない。
ただ、木々に隠れて、天使や妖精の小さな像が微笑んでいるのみだ。
(先に進もう)
動悸のする胸を抑えながら、帆影は立ち上がった。
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