一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 次に目を移したのは、壁一面に並ぶ、飴色の重厚な木製の本棚。中には、装丁の美しい洋書や、古い外国の絵本がきれいに並んでいる。 (ここはブックカフェなんだろうか?)  帆影は首をかしげた。  時間を重ねた色合いのテーブルが、いくつか並んでいる。  それぞれのテーブルの上に飾られているのは、色鮮やかなハーバリウム。そのガラスの瓶が、水晶のように光をきらきらとはじいていた。  カウンターテーブルの奥からは、珈琲と、紅茶と、焼きたてのパウンドケーキの甘く香ばしい香りがただよってくる。 (ここは本当に、日本だろうか)  夢見心地の帆影は、つい、そんな風に感じてしまった。 (知らない国の、知らない時代に、迷いこんだみたいだ)
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