一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 それでいて、どこか懐かしさも感じる。  なんとなくだけど、自分の家の喫茶店と雰囲気が似ている気もするのだ。  大正・昭和のレトロなカフェとか、西洋の城の図書室とか、古き善き魔女の家とか。  いろいろなものを彷彿とさせる、なんとも言えない魔力に満ちた店。  店内の柱と柱に渡してあるのは、真っ白なシーツで作ったハンモックで、そんなところは秘密基地を連想させる。  不意に、ハンモックがもぞりと大きく動いた。 「えっ」  ぎょっとして帆影は後ずさる。  誰かいる。そう気づいたときには、その誰かが、ううん、と寝起きの声をあげながら身を起こしていた。
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