一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 飛び出した流暢な日本語に、これまた驚かされた。  青年は寝乱れていた金髪を、さらりと片耳にかけ直す。先程のひどく驚愕した表情は、きれいさっぱり消えていた。澄ました様子で微笑する様は、花も霞んでしまうほど。 「あ、いや、客というわけではっ」  そもそも、ここが何の店かすら分かっていない。探偵喫茶とは書いてあったけれども。  あわあわする帆影を青年はじっと見つめ、無邪気な表情で言い放った。 「お前、顔色わっるいね」 「は」  ぴし、と帆影の口もとが引きつった。  一番気にしていることを直球で指摘され、頭を殴られた気分だ。しかも、初対面の相手に対して「お前」とは。  青年は、くすくすと笑った。 「おや。でもよく見ると俺に似てイケメンだ──よっと」
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